2015年7月24日金曜日

4割が介護保険から卒業する和光市の地域包括ケアシステム


人口8万人のうち1年で1万人が入れ替わる自治体の「地域」とは?



東武鉄道で日光に行くのは初めて。乗り継ぎ回数の少なさと料金を考えて「区間快速」に乗車。浅草から東武日光駅までこれ一本でOK。テーブル付きのクロスシートで快適、しかも無料なんです。

 7月16日に日光で行われた松本武洋和光市長の講演会・勉強会に参加してきました。4割が介護サービスから卒業するという和光市の地域包括ケアシステムのヒミツは一体どこにあるのでしょうか。

第1部「和光市における地域包括ケアシステムの実践」

和光市の姿

 人口8万人。平均年齢40.1歳で埼玉県では戸田市に次ぐ若さ。高齢化率(65歳以上の高齢者が総人口に占める割合)は16%代。しかし昭和30年代に建設された団地住民の高齢化が進み、高齢化率50%を超えた団地もある。
都心への交通利便性高く、池袋まで12分。羽田空港まで自動車で30分。昼間は約3万人が都内で働いている。東京都練馬区、板橋区に隣接している。
 住民の入れ替わりが激しく、多いときは年間1万人が入れ替わり市民の地域性は乏しい。もともとは人口少なく農地が多かった所に大量な人口流入がおきた。

介護保険の目的を市民に伝える

目的は「自立した日常生活を営むこと」

防災訓練や自治会総会など市民が集まる場所や機会に介護保険の仕組みと目的を知ってもらう努力をした。
介護保険法は、楽をするためのサービスではなく症状の悪化防止と医療との連携に配慮すること。国民の努力義務としてリハビリによる機能回復サービスを利用することが明記されている。要介護状態になった人に適切な支援を提供し、介護から卒業させることが目的。
しかし、当初は高齢者に無理に運動させているといったクレームが多かった。


和光市の地域包括ケアシステムの特徴

マクロ的視点

地域の課題把握。→調査することが重要。
市内のどの地域にどのようなニーズを持った高齢者がどの程度生活しているのか調査し、家族構成や日常生活についてアンケート調査し、地域ごとの課題や必要となるサービスを把握・分析し、課題の見える化を図った。アンケートを回収できた世帯は介護予防的に見ると優秀。逆に未回収世帯は生活困難などのリスクが高い。アンケート回収率は95%。

集めた情報を共有し、活用する工夫

基幹病院とネットワークで情報を共有し、入院時は必要なカルテを基幹病院(国立)、医師会とデータを共有し、退院時には病院の情報を地域包括ケアプラン作成に活用している。対象者個別の情報があることが重要。個人情報を関係機関に提供・共有することはニーズ調査アンケート時に了解済み。
調査をした結果、徘徊が多い地域など、地域ごとの課題も見え道路整備などのまちづくりにも活用出来る。
市民ボランティアの介護予防サポーターを50人養成した。現在はこれが機能している。民生委員さんになんでもお願いすると多忙な民生委員さんのモチベーションが下がる。
ケアプランは本人とケアマネだけのものにせず、ケア会議で市の考えを徹底した上で地域ケア会議で精査する。
「和光市長寿あんしんグランドデザイン」により特別養護老人ホームには頼らずに限界を見据えてサービス拠点やグループホームを整備し、拠点にはオープンスペースを作り地域の住民コミュニティーに解放している。第5期計画で24時間定期巡回型介護訪問が実現し、在宅介護の家族の負担軽減が図れた。介護拠点は市域にバランス良く配置すると全体の効率が良くなる。


第6期長寿あんしんプラン6つの基本方針
1.自立支援の一層の推進
2.在宅介護の臨界点の向上
→和光市では要介護3で在宅。ICT化とコミュニティーケア会議で情報共有
3.サービス提供事業者と地域の互助力(サポーター)との協働。→介護予防・日常生活支援の推進。専門性の高い市民ボランティアが支えている。
4.包括ケアマネジメントの推進→地域と個人の課題を解消する。
5.認知症を発症しても地域で暮らせる→認知症高齢者のすべての状態に対応できる。徘徊高齢者の早期発見の実現。
6.統合型地域包括支援センターの設置で者介護・障がい者福祉・子ども子育て・生活困窮者施策を一元化する。
              

ミクロのケアマネジメント支援・中心は地域ケア会議

コミュニティーケア会議を中心にしたマネジメントにより、マクロ的政策→介護保険事業計画・基盤整備。
ミクロ的支援→自立支援・予防・重度化の予防・人材育成。

介護リスクを減らす工夫

個人因子、環境因子、経済的因子を考慮して因子を分解し、要因を一つづつ減らしていく。ケアマネさんには和光市の政策や方向を理解してもらうための研修を行っている。和光市でレベルの高い仕事ができているのでケアマネさんは他市に移らないため、和光市のケアマネさんの離職率は低い。まず初めに予防ありきで始めた事業。

介護サービス開始年齢を5歳遅らせることが目標

団塊の世代が80歳になる2030年代を見据えて事業を行っている。
福祉の切り捨てはしない。介護を卒業してもらう。
日常生活支援を積極的に行い、介護拠点でのトレーニングを充実、バイタルチェック、管理栄養士による栄養相談や健康相談の対応している。また利用者相互が頑張れるような工夫を凝らしている。
 

第2部 和光市の福祉と行財政改革

経常収支比率88.4%!

和光市の特徴

財政は比較的健全。都心への交通利便性が高いので人口は増えている。核家族・集合住宅が多く地域性が薄く住民の自助は期待できない。自動車メーカーの製造部門が転出し関連工場も無くなった。リーマンショックの影響でメーカーの税収は法人割のみになった。市の年間予算は220億円。

和光市の財政状況の悪化−公共料金値上げを阻むのは選挙?

実質単年度収支は減少傾向。リーマンショック以降急速に財政が悪化。これまで公共料金の値上げもしてこなかったことも厳しい状況の一員だった。公共料金の値上げを阻む原因は首長や議会が市民に痛みを強いることを避けたため。値上げの議案は平成22年の1回目は否決。翌23年に値上げ率を見直して可決された経緯がある。

税金は民主主義の根幹、財政規律の遵守は議会制民主主義の正義である

財政健全化の努力−事業仕分けと大規模事業検証会議

事業の見直し、経常経費の見直し、執行額の残を全て残した。受益者となる市民に適正な負担をお願いし、納税コールセンター設置で滞納には1週間後に督促するなど、滞納対策を徹底した。大規模なハコモノ7事業を無作為抽出の公募委員が仕分けした。

財政規律のルール化が不可避な時代に突入した

財政健全化条例を策定し、財政を見直すルールを作った。さらに政策が左右しない工夫として、4年ごとに市民負担を見直す。人口ひとりあたりの借金額を指標として導入した。

健全財政あってこその福祉

急速に進む高齢化、団塊の世代の津波をどうしのいでいくのか、前期高齢者には元気でいてもらい、地域力を維持していく。職員ひとりあたりの人口は200人。職員削減に業務委託してきたが経費削減に限界があり、指定管理も考えている。図書館業務は財政効果を検証した結果、直営を選択しパート職員を増やした。
多治見市の例のように首長のわがままでおかしな政策を実行しないために条例を制定した。

まちの元気を保つために

先行投資の視点で市民負担をお願いする

市民負担の軽減を優先すると後年の負担増につながってしまう。先行投資としての市民負担を市民が理解するかどうかがポイント。

財政健全化条例制定の際の市議会の反応は?

議会は条例の骨抜きを図る?

首長や議員が利益誘導できなくなるのでどちらかというと反応は消極的だが、やるかやらないかは議会の判断と意思。
こうした条例を制定できれば首長のわがままや思いつきの政策、長期計画にない政策は提案はできなくなる。

リーダーの情熱が自治体を変える原動力

人口8万人で3万人が都内で仕事をしているまち。人の出入りが多く市民が地域に寄せる関心は高くないと市長自らが分析している。財政的な危機も経験した自治体である。財政的負担となる介護福祉事業を展開する際に市を3圏域に分割し、地域のニーズを徹底的に調査し、対象者の個人情報を共有することで、対象者を中心に医療や介護など専門家の意見と育成した市民ボランティアである介護サポーターを活用し地域包括支援センターを核とした地域コミュニティーを構築した成果は大きいと感じた。さらに今後はコミュニティーの中に高齢者以外の子どもや障がい者の支援も想定していることに大きな可能性を感じる。またこうした福祉施策を展開するための財政基盤確立のために首長として様々な改革を実行した経過は小金井市でも参考にすべき事例は多いと感じた。
財政健全化条例を策定した岐阜県多治見市の例にもあるように、首長や議員の気まぐれにより長期計画には存在しないおかしな計画ができないよう、首長と議会がともにチェックしていくことが、未来の市民に負担をかけないことにつながる、との市長の強い信念を感じる講演内容でした。。

生きづらさを救う居場所とは (発達障がい者当事者青年Rさんのお話を聴いて)

昨日の午前中は、公民館貫井北町分館で「コロナ禍を経験して考える 人と地域がつながる共生社会」講座でした。 7 月 23 日まで 6 回連続で様々な生きづらさを抱える当事者のお話しを聞く男女共同参画講座 の第 1 回目で、講師はこれまで 3 期にわたり小金井市地域自立支援協議会...