8月2日(金)に東久留米市にある東京学芸大学附属特別支援学校を会場に開催された「発達障害と食の困難と発達支援」〜本人・保護者を交えて考える〜 に参加した。
発達障がい児者当事者に多い感覚過敏が関係する食の艱難について、東京学芸大学高橋智先生と立命館大学の田部絢子先生からの解説、食の困難を抱える当事者2人と、当事者のお母様のお話を中心に、第2部では専門家と当事者を交えたパネルディスカッションが行われた。
食べ物の好き嫌いは発達障がいのある、なしに関わらず誰にでもあるものだが、発達支援などの専門機関でも、障がいと食の困難さの関係についての理解不足はあること。好き嫌いは偏食ではないこと。食の困難について、その困難さが多様で、本来は個別的な対応が求められるものであることが分かった。
食の困難さの支援は近年のニーズの高まりを受け、歯科医療に新たな考え方が浸透した結果、2018年から機能発達不全症として保険適用となり、地元小金井市にある日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックが口の発達支援センターKURIN(くりん)で摂食障害のサポートを始めている。
食の困難を抱える子どもたちが成長する過程で、まず始めに子どもたちの前に立ちはだかるのが、保育、教育の場で行われる完食指導だ。特に就学前の発達にアンバランスのある子どもたちの場合は、本人も辛いのに辛さを言語化できず、また多くは辛いと感じていない、他者との感覚の違いがあることに気づいていないことが本人の辛さを助長するのだ。母親に安易に調理の工夫を求めることも母親を追い詰めるだけで、かえって親子の緊張を招いてしまうことが、当事者の母親の立場から語られた。
「正しい食べ方や完食指導の前に、本人にプレッシャーを与えず、チャレンジを求めずにまず、本人の話しを聞くべきではないか」との田部先生のお話は、指導者たる学校の教員や保育所、幼稚園の教諭の皆さんには是非とも聞いていただきたい内容だった。行きすぎた完食指導は、当事者たる子どもたちにとっては虐待に等しく、心に深い傷を負わせてしまうことをもっと認識すべきであろう。このことは登壇した当事者が当時の行きすぎた指導について、はっきりと「あれは虐待だった」と話していたことの重さを受け止めるべきと感じた。
「食の困難を抱えた子どもには他にもなんらかの困難を抱えている」という当事者の母の言葉も強く印象的で、専門的研究者のリードにより、食の困難について、当事者視点で知ることのできた大変貴重な機会だった。
最後に当日の登壇者のひとりである菊間章紘(きくまあきひろ)さんが絵を描き、高橋智先生が監修した絵本「あっくんはたべられない」(食の困難と感覚過敏)を紹介したい。
周囲のみんなと同じものが食べられなかった自分の気持ちを表現したもので、こうした感覚・体験を絵本にして、子どもの偏食は好き嫌いやわがまま、母親の調理方法、上手下手の問題ではないことを、絵本にして広く知らせることは、保育・教育に携わる関係者はもとより、食べることにアンバランスを抱える子どもたちにとっても、その意味は大きいのではないだろうか。