以前から立川市で障がい者就労を考えるグループの勉強会に参加させていただくうちに年に1度開催する講演会やシンポジウムのお手伝いをさせていただくようになった。
今年は「可能性を伸ばし生きる力を育む」〜青峰学園といなげやウイングに学ぶ〜とのタイトルで11月22日に開催された。
青峰学園とスズキの関わりは、2014年7月に縁あって訪問させていただき、その時の感動を当ブログ 都立青峰学園 私たちは、パン屋さんを育てているのではなく、パンを作る「人」を育てています。 に書かせていただいて以来、気になっていた学校で、今回の講師である青峰学園主幹教諭の永峰秀人先生のお話は個人的にも楽しみだった。この時のお二人のお話とその後のディスカッションでのやり取りを振り返り、障がい者雇用について考えてみた。
1.特別支援学校におけるキャリア教育とは(青峰学園 永峰秀人先生のお話)
キャリアとは、人が生涯様々な枠割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分との関係を見出していく連なりや積み重ねのこと
青峰学園では大きく分けて知的障害教育部門と肢体不自由教育部門が設置された併置校で、知的障害教育部門では(高等部・就業技術科)として、食品・福祉・エコロジーサービス(園芸とビルクリーニング)・ロジスティック(物流と事務)の4コース6領域が設置されている。
「ワークキャリア」とは働く力を身につけること」
かっこいい社会人を目指して努力すること。そのために必要な体力・コミュニケーション・やる気(働く意欲)・キープ(働きつづける力)4点合わせて「た・こ・や・き」を身につけることを目標に指導し、1年生では4コース、6領域全てを10日間づつ体験し、実際の会社でのインターンシップでの体験から、生徒自身が就きたい仕事を「あこがれ」から、より現実的な選択に変化していく。
「ありのままの自分でいい」と感じてもらうこと
人の役に立った、認められた、感謝されることで自己肯定感、自己有用感を生徒が実感すること。そして自分と他者との関係を肯定的に受け止められることが社会性の基礎につながる。
「ワーク」と「ライフ」を分けて考える
永峰先生は参加者に「人は何のために働くのですか?」。「人は自分の生活を楽しむために働くのではないですか?」と問いかけます。働く力をつけるためには「ワーク」と「ライフ」を分けて考え、「楽しみ」はライフの領域で、生活を楽しむために働くことを学ぶ。
「ライフキャリア」とは生活の力
生活の楽しみ方を身につけることで、働く目的が明確になり就労の継続につながることから、近年はワークキャリアからライフキャリアに重点をおいた指導に変化してきた。
小学校・中学校時代に身につけたいチカラとは?
子どもの発達は積み重ねではなくジグソーパズルのピースのようなもの。穴が空いていても適切に支援すれば発達する。日常の生活場面からできることを増やしていくことが大切。
2.障がい者雇用の取組みと合理的配慮について(いなげやウイング 石川誠さんのお話)
なぜ障がい者を雇用するのか。特例子会社いなげやウイング
いなげやの企業理念である「4つの満足」すなわち会社・従業員・顧客満足に加え、社会的満足として社会的責任、コンプライアランス、税金、雇用の創造を会社の使命とする中で、社会的使命として障がい者当事者の生活を豊かにすることを目標に障がい者雇用と自立支援に取組んできた。いなげやでは障がい特性や個人の体力、能力により様々な働き方が可能になっている。就労後の退職率も公表しているが、特例子会社いなげやウイング設立前後で離職率は23.6%から17.1%に好転している。
やっぱり基本は「相互理解」
採用前の個別面談で相互理解を高め、企業が求める社員像を伝えている。即戦力である必要はなく、働く意欲を継続できる力が雇用の継続につながる。
合理的配慮は法的な義務
障がい者と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のもの。当事者とのコミュニケーションや対人関係的配慮は欠かせない。
あいさつは仕事そのもの
人の印象は3秒で決まる。あいさつは3秒でできるコミュニケーション。社会人としてあいさつは仕事そのもの。悪い例はその場で指摘してすぐ直すこと。こうしたことを小・中学校時代に身につけておく。
3.第2部パネルディスカッション
特別支援学校におけるキャリア教育とは?学齢期のうちに育みたい力とは?
第2部では講師の永峰先生、石川氏に立川市手をつなぐ親の会副会長の野々(のの)さんを加えたディスカッション。3人のお話のコーディネートは不肖スズキが担当した。
(石川) 「相互理解」による本人への配慮がワークライフバランス向上につながり成長するが、過度の配慮は逆効果。
(野々)特別支援学校におけるキャリア教育?
(永峰)本人の「伸びしろ」を見てくれる会社が増えてきた。「キャリア教育」は特別支援学校で40年前からやっている。周りがやっと追いついてきた。重度の障がい者にも、その場での生活を豊かにする意味でキャリア教育と呼んでいる。個人の成長のスモールステップを大切にしている。愛の手帳2度でも一つの工程でもできれば就労は可能なことを保護者に伝えたい。当事者にとっては自分のできることを説明できることがとても大事。
(永峰)本人の「伸びしろ」を見てくれる会社が増えてきた。「キャリア教育」は特別支援学校で40年前からやっている。周りがやっと追いついてきた。重度の障がい者にも、その場での生活を豊かにする意味でキャリア教育と呼んでいる。個人の成長のスモールステップを大切にしている。愛の手帳2度でも一つの工程でもできれば就労は可能なことを保護者に伝えたい。当事者にとっては自分のできることを説明できることがとても大事。
(鈴木)最後に、就労を迎えるにあたり学齢期に備えておきたい、育んでおきたい力とは?
(永峰)感謝をもって生きること。感謝の気持ちの表現力。
(永峰)感謝をもって生きること。感謝の気持ちの表現力。
(石川)困った時に相談できる力。
4.特別支援学校のキャリア教育はすべてのお手本(講演会まとめ)
働くことの意味を「自らの生活を楽しみ豊かにすること」と捉えて生徒一人ひとりに向き合い、チャレンジの場を提供し適性を見定めて進路を決めていく青峰学園の指導方法は学校教育すべてが目指すべきものではないのか。
企業の理念として、法定雇用率(民間2.0% 国・地方公共団体2.3%)を上回る 4.0%雇用を目標とするいなげやウイングの雇用努力は企業全体がすべての社員のワークライフを見直すことにつながっている。
学校でも企業でも、障がいある人への配慮が行き届くということは、すべての生徒や社員にとっても優しいということだろう。障がい児・者に対する合理的配慮の提供はすべての人にとって大きなメリットがあることを改めて考えることになった講演会だった。