2018年11月22日木曜日

子どもの発達と教育相談を一本化した「エール」(日野市発達・教育支援センター視察報告)




福祉と教育部局が同居し、相談支援を一元化した「エール」

 平成30年11月9日、日野市のエール(日野市発達・教育支援センター)の会派視察を行った。
 今回、小金井市議会からは鈴木成夫、村山ひでき、岸田正義、沖浦あつし議員。府中市から須山たかし議員、あきるの市から中村則仁議員の6名で訪問させていただいた。業務がご多忙中にもかかわらず、視察にご対応いただき、丁寧なご説明をいただいたことに心より感謝を申し上げたい。 


巡回相談は幼・保・小・中で実施、特別支援教育全般もエール発で支援し、「かしのきシート」で連携・共有

 エールは、既存の障害児通所施設「希望の家」の老朽化により、平成26年4月に開設された施設で、発達支援課と教育支援課が同じ施設の1階フロアあり、発達や教育に関連する相談と支援窓口が一本化されていることが最大の特徴だ。
 センターに寄せられた相談は、センター総合相談受付で受け止め、内容に応じ、就学相談、心理相談、SSW、医師など適切な担当者、必要な支援につないでいる。 
 施設の実施事業は、大きく分けると相談支援(心理、一般、医療、就学・進学相談、児童福祉法に規定する障害児相談、計画相談)支援事業(定員35名で2歳〜5歳児対象の通園事業、幼児親子グループ、集団専門指導、個別専門指導、集団トレーニング、保育園・幼稚園・学童クラブ・小中学校への巡回相談、学校からの依頼によるスクールソーシャルワーカーの派遣)
 学校への事業として特別支援教育(特別支援学級、特別支援教室「ステップ教室」、学校の保健室と言われるリソースルームでの個別学習支援、日野スタンダードと呼ばれるインクルーシブモデル授業のユニバーサルデザイン化の研究、一時預かり、保護者交流と不登校支援)などなど、と多種多様な業務を0歳から18歳までを対象に行っている。「かしのきシート」は日野市の発達支援シートで、日野市の場合は施設が記録し保護者にも開示する形で個別の教育支援計画とも統合されている点が小金井市とは大きく異なる点だ。

個別教育支援計画と統合された「かしのきシート」は、希望すれば保護者がすべて見ることができる

 かしのきシートとは子どもの成長を記録した個別の支援計画で、就学前から就学後18歳までの支援を切れ間なくつなぐためのものだ。小金井市のさくらシートも同様の目的で作成されたものだが、就学相談時や就学後には活用されないことが課題だ。日野市では、発達・教育支援システムのカルテで一本化し、かしのきシートと個別の教育支援計画との情報を共有化、管理している。子どもの利用施設がカルテに記入すれば統合された情報がカルテに蓄積され、小・中学生は教育支援計画と統合されているため、学校の校務支援システムとも統合されているため、教員の手間を増やさずにシステムは活用され、本人が30歳になるまでエールが管理し、大学進学時や就労にも活用されている。

早期発見、早期療育の実現は巡回相談から

 発達・教育支援システムに参加する施設は、保育園、幼稚園、小・中学校合わせて76拠点あり、かしのきシートを管理し、またそのすべてに巡回相談が行なわれている。かしのきシート作成者は全児童・生徒数の約6%で、これは何らかの配慮や支援が必要な児童。生徒の割合とされる6.5%に迫る数字だ。保護者から受けた相談内容は、必ず保護者の同意を得て所属機関に伝えて連携している。
 小金井市では課題となっている巡回相談体制は、保育園は以前からの委託事業で12名体制。幼稚園はエールの3名で対応。学童、小・中学校も3名体制で年3回実施している。

総勢60人の専門職が相談と支援にあたっている

 保健師、言語聴覚士、作業療法士、臨床心理士、社会福祉士、教員OB、スクールソシャルワーカーなどの専門職は、正規職員以外にも非常勤嘱託職員として、勤務形態により集計が難しいが総勢では50〜60人ほどは所属し業務にあたっている。現状で相談事業の待機はなしだが、発達検査は受付から検査まで2〜3ヶ月期間がかかる。
 また相談支援事業は通園部門の利用者が中心で、すべての利用者を対象にしていない。
 保育所等訪問支援の実施については、エールは児童福祉法上の児童発達支援センターではないため、現状では未実施だ。

小金井市がエールに学ぶべきものは?


 子どものカルテを一本化して施設間で共有し、その子どもに合わせた支援方法を提供している。そしてその記録は学齢期以降も引き続き記録されるため、18歳以降の就労や大学受験の際にも活用され始めているとのお話を伺った。これは児童発達支援事業が、18歳以降のキャリア支援に活用された興味深い事例である。 
 一方、小金井市の発達支援シート「さくらシート」は、就学後にはあまり活用されていないと感じている。そして幼稚園・保育園に対する巡回相談体制は十分とはいえず、支援ニーズの共有化も不十分だ。巡回相談の結果、支援や配慮が必要な子どもたちの存在は明らかになったとしても、保護者の障がい受容が進まない等の理由から、早期発見できても早期療育につながらないため、毎日生きづらさを抱えて困っている子ども自身に支援が届いていない状況が、少なからずあるのではないかと感じていて、ここが最大の課題だ。
 しかし、この課題は指定管理委託事業所の「きらり」単独では改善できない問題で、そのためには子ども家庭部、福祉保健部、学校教育部と教育委員会が協働し、きらりの実施事業を中心にした小金井版の「子ども支援システム」を構築し、すべての子どもの育ちを支える環境を整えるべきで、そのために日野市の取組に学ぶべきものは多いのではないだろうか。私自身、今後もより良い子どもの発達支援施策を考える上で大変参考になる視察だった。
 
 

生きづらさを救う居場所とは (発達障がい者当事者青年Rさんのお話を聴いて)

昨日の午前中は、公民館貫井北町分館で「コロナ禍を経験して考える 人と地域がつながる共生社会」講座でした。 7 月 23 日まで 6 回連続で様々な生きづらさを抱える当事者のお話しを聞く男女共同参画講座 の第 1 回目で、講師はこれまで 3 期にわたり小金井市地域自立支援協議会...