行政視察報告・岩手県北上市

 
 
 総務企画委員会では、7月28日に岩手県北上市、29日に宮城県石巻市の行政視察を行いました。視察地と視察テーマは、ワタクシ鈴木しげおの提案です。一日目に訪問した北上市は岩手県南西部に位置する人口93,000人の自治体。小金井市とは、93年前に北上川沿いに開園した「展勝地」に小金井桜を寄贈した縁で交流があり、東日本大震災発災後の平成23年3月24日には小金井市から支援物資を運びました。その後の平成24年5月には災害時相互応援協定を締結しています。



震災後に耐震補強が施された庁舎の外観と補修した天井版
 北上市での視察テーマは「東日本大震災における被害状況と現状及び桜に関する観光行政について」
 担当部局の説明に先立ち、市議会議長と高橋市長からご挨拶。93年前の展勝地開園時に譲り受けた小金井桜が縁で交流が続き、大震災時の支援物資提供に感謝しているとのご挨拶をいただきました。
      

【東日本大震災における被害状況と現状】

 消防防災課高橋さんより説明。北上市は、常備消防を西和賀町との一部事務組合「北上地区消防組合」により運営。市の消防防災部は消防組合内に設置されているので、市の直営に近いイメージ。東京消防庁に委託している小金井市とは消防本部との距離感、関係性が違います。
 説明はパワーポイントと配布資料で。資料は「北上市の防災対策について」

(震災当時の状況)

 震度5強の揺れにより、大規模な停電、断水、学校等公共施設、道路、橋脚が破損。JR東日本東北新幹線高架橋の橋脚も破損した。(その後、わずか49日で運転再開を果たしている)
・内陸部のため津波被害が及ばなかったため、犠牲者は1名。行方不明者が1名。その後の震災関連死が1名。
・市役所庁舎の向かいにある健康管理センターに災害対策本部を設置し、避難所は市内に33カ所設置したが、通信が途絶したため、避難所間などの連絡は、64部ある消防団の車両を避難所へ配備して消防無線でやり取りをした。
断水は1週間。健康管理センターは断水しない構造だったので給水所になった。水道の本格復旧には時間がかかった。
・通信インフラが喪失し、行政から市民に対する情報発信、行政感の通信も十分ではなかった。市民への情報は、掲示板に手書きで貼り出していた。
・ガソリン不足が深刻。公用車の運行も制限され、支援業務に支障を生じた。

震災後に行われた改善の取り組み)


・大震災の経験がこれまでなかったために、災害時の動きがわからず、職員の自主的な動き・対応ができなかった。各課が政策企画班からの指示待ち状況だったが、その後5月23日に庁内プロジェクトチームを作り、被災者支援の手続きを一元化した。その結果、担当課もそれぞれの通常業務に専念できるようになった。
・震災後に、北上市総合計画(平成20〜30年)には大きく手を加えずに、地域防災計画の見直しをした。

1.迅速な災害対応への災害対策本部体制

 これまで職員は、本庁舎に集合後担当の現場に向かうことになっていた。本部員の役割が不明確だったため、総務企画班に指示伺いが集中し、作業が煩雑化していた。災対本部参集訓練を実施していなかったことも大きな反省点。
→緊急初動特別の強化職員は職員の担当現場に直接参集する形式にした。
→平成25年12月に北上市災害対策本部運営指針を策定した。災害時に職員が自主的に動けるようにして、総務班は全体の総合調整をする形式に改めた。

2.震災時の避難所運営の円滑化

 震災時は、通信インフラ途絶で、避難所情報が発信できず、開設された避難所情報が市民にはわからなかった。
開設する避難所を第1次(17ヶ所)第2次(56ヶ所)に分類。
避難所を1次・2次に分類し、2次は状況を見て開設する。1次収容避難所と本庁舎、合計17ヶ所に防災備蓄倉庫を設置し、5年間で目標値の食料備蓄を目指す。目標値は避難所となる地区センターの定員分(100〜120人)×3日分。

3.災害時の通信手段の確保

震災時は3カ所の庁舎間、収容避難所、対市民への通信手段の確保ができなかった。
→自主防災組織などの組織ベースと市民個人ベースでの情報発信の強化
組織ベースでの強化:自主防災組織(94組織)間は携帯無線、各行政庁舎間の連絡は衛星系携帯電話を配備した。
個人ベースでの強化:緊急速報メールの運用を強化した。

→防災体制構築の強化
対市民:時間経過に合わせた住民個人へのリアルタイムな情報提供の強化が必要。タイミングにより情報を発信する情報の内容と対象が変化する。コミュニティーFMの活用を検討中。会社と契約し、地域情報の発信が可能になる。ラジオの情報が個人への情報強化の取り組みになる。

全体的な課題解消に向けた取り組み:
消防庁指定のアドバイザー派遣を要請し、アドバイスをもらう。派遣日時は未定。派遣は決定した。
・避難勧告の発令を用いた検証(H26北上市総合防災訓練で検証する)訓練で勧告を発令する。
・職員初動マニュアルについて
手帳形式で職員が携帯するもの。初版は22年に作成していた。実際の地域防災計画は分厚いので参照しづらいので、ポケット判にした。3・11後に体制が変わったので、今回4月に作り直した。現在は第2版。


これが職員に配布された防災初動マニュアル。手帳形式で携帯可能。職員各位の自主的な行動を実現するためには有効なものと感じます。


(質疑応答・意見交換)

・避難所運営の住民参加の方法は、震災後に市民意識が変化し、組織が活動するようになった。避難所運営について、避難者自身での運営を経験するために避難所運営ゲームしている。要援護者対応は情報が乏しかった。県立花巻中部病院近くの交流センターを次避難所にしていた。震災後は、新たに社協と協議して福祉避難所を増やす検討している。福祉避難所の運営マニュアルを準備している。
・備蓄食料の目標値は、避難所となる地区交流センターで100から120人収容できるので、人数分×3日分を目標値に設定し備蓄を進めている。
・自主防の携帯無線の形式は、MCA無線で、各地域センターと自主防の連絡をするようにした。
 ・トイレは水が流せなかったため最初はポータブル。現在は固めるタイプを配備した。
避難所33カは、4月15日まで開設していた。その後、ホテルや旅館を借り上げて沿岸地域の被災者を受け入れた。沿岸の支援ができた理由は、北上市に大きな被害がなかったため。小金井市からの物資も沿岸地域に送った。市民は不便ながらも不通の生活に戻れた。議員の対応は、地元の避難所で、それぞれができることをしていただいた。
・町会・自治会の動きは、33カ所の避難所は市が指定した避難所ではなく、自治会が自主的に指定した避難所もあった。自主防災組織も設立して新しいところは何をしていいかわからず、動けない組織もあった。新しいマンション住民を地域住民の避難所に受け入れた例もあった。避難所に対し、物資の配布だけしかできなかったという反省もあった。震災後は、総合防災訓練も16地区持ち回りで訓練するようになった。今年で3回目。
・災害時の情報発信ツールとしてのコミュニティーFMについて、参考にしている自治体は奥州市、一関市、など、設置済みの近隣市を参考にしている。運営は民間に任せたい。経営の部分が課題になっている。災害時の有効な手段と思うが、法人の運営が問題。国の補助はないので市の財源での運営を考えている。
・地域防災計画見直しについて、市民の関わり方。パブコメ以外での取り組みは、パブコメ前に自主防災組織にアンケートした。意見交換会も行った。
・ボランンティア受け入れについての考え方は、北上市の場合、多くのボランティアが必要になるのは北上川の氾濫。受け入れについて社協と協議している。
震災当時に災害対策本部が設置された健康福祉センター

【桜に関する観光行政について】

商工部商業観光課及川課長より説明。

 桜まつり来訪者は3週間で30万人。年間で50万人。半分は展勝地来訪し市民の誇り。古くは和賀展勝地と呼ばれていた。展望のきいた景勝の地という造語。弘前、仙北(角館)市と並ぶ東北の3大桜名所。桜行政の中心地が展勝地。大正10年5月21日に開園し本年で93年目。開園当時に小金井桜を1200本植栽。旧黒沢尻町長が対岸の旧橘村に持ちかけて実現したもの。桜まつりの開催日時は固定。連休の終わりまで開催し、本年は5月6日まで22日間開催。平成23年も震災復興を祈念して、華美にならない程度の規模で開催した。展勝地の来場者数を3大名所で比較すると、北上の倍が仙北(角館)、仙北の倍が弘前。
桜行政関係団体は、北上さくらの会:会長は前市長。展勝地連絡協議会:行政が行う出前講座用の資料として、展勝地近辺の施設案内資料を作った。
他の観光地としては、サトウハチロー記念館。みちのく民俗村(曲がり屋)。国見山廃寺。陣ゲ丘などがある。展勝地公園を平成12年から整備中。終了は平成29年度予定。広さ19ヘクタール。

(質疑応答・意見交換)

・桜のライトアップの期間は10日間ほど。全体の本数を照らせていない。何本かに1カ所照らしている。
・観光の担当課3つの役割分担主催3団体、行政の観光課は企画。実施は観光コンベンション協会。特産品の開発は商工会。
来訪者対応の人手は、観光協会職員が4人、行政と商工会で10人。アルバイトで20人ほど雇っている。警備も別に増員。仮設トイレ5〜10基増設。公園トイレの横に増設している。駐車場とトイレの整備が課題。毎年苦情が多い。


北上駅コンコース改札口の上には、地元にアトリエを構えた利根山光人の作品。

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