誰のための議会改革なのか(議会運営委員会行政視察報告)

行きの新幹線の車中から望む富士山。時速285キロでのシャッターチャンスは一瞬。

1月28日に岐阜県可児市、29日滋賀県大津市へ議会運営委員会の行政視察を行った。

岐阜県可児市議会

28日に訪れた可児市は岐阜県の人口約10万1千人の自治体で、自動車部品メーカーが立地する関係で、ブラジル、フィリピンなどの外国人も多く(約5,400人)居住している。市議会議員定数は22人(うち女性3人)。

名古屋駅で名鉄線に乗換え。JRの駅と地下道が直結しておらず少々面倒な乗換えとなる。この距離感に鉄道事業者の考えが見えて興味深い部分である。

名古屋駅から名鉄線で約1時間で到着する最寄駅は新可児駅。中京地区の通勤圏に属し沿線の宅地化が進んでいる。自動車部品の製造メーカーが立地する人口101,000人都市だが、駅は線路が行き止まりの終端駅である。名鉄清見線の終点へはさらにここで乗り換え、スイッチバックで進行方向を逆にして終点の御嵩駅を目指すことになる。中央本線多治見駅と高山線美濃太田駅を結ぶ太多線の可児駅が隣接しているが、こちらは非電化の単線で、列車本数も1時間に1〜2本なので名古屋へは名鉄線の方が便利に思えた。
議場フロアのエントランスにある掲示板に議会改革の歩みが掲示されていた。

市議会に対するサイレントマジョリティーの意見を引き出していきたい

市議会を批判する市民も応援してくれる市民も、市民全体からみれば圧倒的なマイノリティー

私たちの説明に対応してくださったのは川上前議長。可児市では平成15年9月の議会活性化特別委員会での取り組みから、平成22年12月に立ち上げた議会基本条例調査研究PTの設置から特別委員会、平成24年12月に議会基本条例制定と改革の歩みを進めてきた。二元代表制の一方の代表である市長と議会の対等な関係の確立のお話から始まり、マニュフェスト大賞受賞、大学生・高校生との連携と主権者教育の取り組みまで、言葉の歯切れが良く実にバイタリティー溢れる説明だった。
議会改革を進めてきた市議会の活動について、自身の思いも含めて熱くご説明をしてくださった川上文浩前議長

市議会は合議体、議案の採決は全会一致を目指している

議論の充実のため、論点や争点を明確にし、執行機関や傍聴者にとってわかり易くする工夫として一括質問・一括答弁か一問一答方式かを議員側で質問通告時に選択できたり、執行機関の反問権を認め討論採決の前に自由討議を行えるよう規定し、議場に設置したスクリーンを用いてパソコン等を活用した一般質問を可能にしている。
こうした改革は、当時の政務調査費を活用して実施した市民アンケートの「市議会に関心がない」「議員の活動内容を知らない」などの市民の声を受け止めて進められてきた。また正副議長は立候補制度を採用し、立候補者による所信表明を実施する斬新な取り組みも行っている。所信表明は議長マニュフェストとなり任期中の実現に努めることになる。議長マニュフェストの他に引き継ぎ事項があり、議会全体が継続して取り組むべき課題を次期に継続している。可児市議会ではこれを「議会運営サイクル」としており、こうした方針は選挙で選ばれた議長の方針を市議会全体が支えることにもつながっている。



予算・決算特別委員会質問は通告制。資料を見れば分かる質問は正副委員長が議員と調整して削除している

小金井市議会でも長時間審議が議論となっている予算・決算特別委員会では、部局からの説明を所管ごとに3日間に分割して説明のみを行い、議員の質問は完全な通告制としている。質問は正副議長が精査し、資料を参照すれば分かるものは削り余分な質問をしない工夫をしていることは大きな驚きである。部局の答弁は会期終盤の所管ごとに開催する委員会終了後に「予算決算委員会分科会」で行っている。こうした工夫をすることで、部局を長時間議場に拘束すべきでないという信念を感じたところである。こうしたムダな質疑を減らす工夫として、執行部から「重点事業点検報告書」の提出を受け、結果の分析と課題を明らかにしていることも注目すべき点である。
この他にも委員会運営のICT化(サイボウズを活用していた)を進め、委員会資料をネット上で共有することで所管外の委員会資料の閲覧も可能にすることで委員相互の意見交換や認識を深める取り組み、議会だよりを活用し、参加者が話せる工夫をした議会報告会、あきる野市を参考にした議会だよりのリニューアル、各種団体との懇談会開催、議員研修の充実などの取り組みの他、地方都市の大きな悩みとなっている若者の都市部への流出による地方都市の衰退に歯止めをかけたい思いから始まった地元高校との連携により地域を知る場の創出によりふるさと発展に寄与する若い人材発掘を視野に入れた取り組みや、市議会が設立を支援したNPO法人「縁塾」の高校生を対象にしたキャリア教育支援などに至っては発想が新鮮すぎてお話についていくだけで精一杯だった。
議会と高校生とのこうした取り組みは、同時に今年から施行の18歳選挙権に対する生きた主権者教育となるわけで、将来世代に対する影響は計り知れないと感じた。川上前議長の「地方議会のマターとして地域を盛り上げる。このままでは地方は衰退する。議員が地方を変えることができる。議会が次世代の若い議員のなり手を育成する意味からも主権者教育は重要」との言葉が強く印象に残った。

翌日は朝から雨。琵琶湖の眺望は全て霧の中。大津市域は琵琶湖に面し南西岸から南岸にかけ南北に細長く広がっている。

滋賀県大津市議会

29日は大津市へ。人口約33万7千人、市域は琵琶湖に面して南北に細長く広がっている。南北に距離があり地域特性が異なる特徴があるという。滋賀県の県庁所在地でもあり、西が京都市で県庁所在地が隣接していることになる。大阪への通勤圏で、琵琶湖岸には建設まもないマンション群とショッピングモールが建設され、歴史的趣のある旧市街地と対比をなしている。議員定数は38人(うち女性議員は7人)
視察前に出されていた質問項目は主に政策検討会議、ミッションロードマップについて。主に対応していただいたのは伴 孝昭副議長と竹内照夫議運委員長。こちらもICT化された議場に設置されたスクリーンを活用した説明を伺うことができた。

 

劇的な改革は4年間で行われた

大津市議会の議会改革は平成23年度の「政策検討会議」を制度化することから始まった。その後24年度に「予算決算常任委員会」を設置し、翌25年度には通年議会を導入し議会報告会を実施、議会BCPを策定するなどの改革を行いこの年にマニュフェスト大賞議会グランプリを受賞している。平成26年度に議会基本条例と災害等対策基本条例を制定、平成27年度には議会ミッションロードマップを制定し、政務活動費のネットでの全面公開に踏み切った。この間も地元大学との連携を進め、現在は3つの大学とパートナーシップ協定を締結している。そして3年連続してマニュフェスト大賞を受賞していることも特筆すべき点と感じる。


本会議場の机の棚にはヘルメットが常備され災害時に備えている。これは議会BCP策定による成果の一つ。議場のマイクは赤外線通信によりワイアレス化され、議場ICT化には最新の機器が備えられていた。

議会ミッションロードマップとは何か

議会ミッションロードマップ策定で目指すのは、議会基本条例の具現化、市民への説明責任、市議会の見える化ということである。つまり議会基本条例を「作ったらおしまい」ではなく、日々市民のために働く市議会を目指し議会の責任を実行していくために策定したのだ。そして策定したロードマップも議員任期が切り替わる平成31年3月までに現行計画の見直し次の計画につなげることも定めている。
具体的には、実行テーマを「政策立案」と「議会改革」の2つに分け、政策立案では4年間で4つの条例を議員提案で策定すること。議会改革では大学との連携に加えて専門的知見を有する「職能団体」との連携の強化、正副議長の立候補制・所信表明制度導入、議会活動評価制度構築、政策形成過程における住民参加のあり方の検討など、課題を具体化して取り組むべき改革の見える化を進めていることが大きな特徴である。


政策検討会議とは・・議員提案の条例制定を目指したもの

議員提案の条例には議会基本条例や議会ミッションロードマップの策定も含まれ、テーマを出した提案会派等が座長を務め、各会派選出議員で構成される。これらは議会運営委員会の承認を得て進められるもので、条例制定に必要な執行部や参考人招致、公聴会開催議会事務局の支援を受けつつ、政策検討会議が主体となって進められていることが分かった。
こうした取り組みに不可欠となる専門的助言を得るために3つの大学とパートナーシップ協定を締結し、一部の大学からは学生インターンの受け入れも行っている。
また議員力向上のために議会改革や議員の質問力向上、議会BCPなどの研修を議会として行っていた。
議員提案の条例にもパブリックコメントを募集し市民意見の反映に努めている。政策検討会議のテーマが議会運営委員会全員の承認を得たものでも必ずしも条例が全会一致とならないこと、また会議の途中で賛同できない会派が抜けることを認めている。また政策提案の内容が市長の政策と異なり、執行権を制限する可能性がある場合は理事者と慎重な協議が必要なことを認めている。
政策検討会議は公式な協議の場とは位置づけておらず、会議は原則非公開だが、会議に諮り公開できるとしていた。
政策検討会議の性格上、協議する内容を非公開とした方がいい場合と、市民にある情報公開の流れのバランスに配慮した賢明な判断だと感じた。

大改修が行われ駅北側に駅ビルの巨大な壁ができて以降、京都タワーは駅の外へ出ないと臨むことができなくなってしまった。京都タワー建設の際も景観論争があったはずだが、この大改修により駅と街並みの距離がさらに広がってしまったことは非常に残念。

なぜ劇的改革ができたのか

改革のスイッチを押したのは何か

今回視察した二つの市は平成の大合併市町村合併は行っていなかった。そして議会改革はいわゆる市長与党的な最大会派からされていた。改革を進めるために必要な合意形成を図っていくためにはここが大きなポイントと感じた。

議員歳費の過度な削減は若い議員の「なり手」を減らす

地方都市共通の課題である若年層の流出、人口減少への危機感が強くあった。地方の衰退を食い止めるためには地域の魅力の発信とともに、市議会が地域とともにありつづけるための取り組みとして議会改革を位置づけていた。高校・大学との連携も、選挙権の18歳引き下げを見通した主権者教育に留まらず、若い世代に地元地域を理解してもらい誇りを持ち地元で働くことの大切さを議会の側から伝えていた。議員定数や歳費の削減についてはどちらの市議会も否定的だった。「議会が市民の側に立てば当然議員の仕事量も増えるので、生活給の保証は必要になる。これを自ら削減すれば将来若い議員のなり手がいなくなり、市議会そのものが衰退する可能性がある。議員定数の削減についても市民代表は一定数必要で、過度な削減は市民代表の発言の機会を奪うことになる」とのお話が印象的だった。
これからの市議会は誰のために働くのか、議会改革の目的は一体何かについて、多くの気づきを得る視察だった。

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