2016年2月11日木曜日

地域の活性化は地域を知ることから始まる(総務企画委員会行政視察報告)

総務企画委員会行政視察報告

京都府綾部市→ハイパー消防団

大阪府箕面市→シティプロモーション

平成28年に入り3回目の行政視察は総務企画委員会。視察先は京都府綾部市と大阪府箕面市。綾部市では全国でも珍しいハイパー消防団と機能別消防団について。箕面市ではシティプロモーションについての調査を行った。

京都駅で新幹線からJR山陰本線に乗り換え綾部市へ。乗車した特急の名は「きのさき」。どこかで聞いた名前だがそんなことは気にせずに乗車。綾部市までは概ね1時間の旅。
綾部駅の外観。山陰本線と舞鶴線が分岐している。綾部市は道路交通上も京都から山陰へ向かう京都縦貫道と舞鶴若狭道路が交差する交通の要衝となっている。また、若狭湾に注ぐ由良川が市内を流れている。
綾部市消防本部庁舎の外観。耐震補強工事中だった。消防本部は昭和30年5月に設置され、昭和40年消防署発足、昭和43年から救急業務開始している。現在1本部1署1分遣所で職員数52名(うち女性3名)、消防車9台、救急車3台配備している。


綾部市

消防団は条例定数960名12個分団。市域を3ブロックに分割し1ブロック3個分団で構成

視察の対応は綾部市消防本部の上原管理課長、綾部市消防団の馬嶋団長にも直々にご出席しご対応いただいた他、市議会の吉崎副議長による綾部市の概要のご説明に続き、消防団についてのご説明をいただいた。
消防団の構成は団本部と12個分団。市内を3ブロックに分けて1ブロック4個分団で構成し団員数は895名。条例定数は960名で現状の団員の充足率は93.2%。うち女性は本団付きの女性消防団「シルキーファイヤー」として平成22年4月に発足し、団員数は現在21名となっている。分団の装備はポンプ車14台で、各ブロックに1台、小型動力ポンプ、AED、チェーンソーなどを積載した小型多機能消防車を配置、団長をトップに各部ごとに副団長が1名(合計3名)分団は部制で各分団ごとに5〜8部で構成されている。市の面積が347.11㎢と広大なため、小金井市とは全く構成が異なり大規模な組織である。


ハイパー消防団は67名。建設系特殊車両、電気工事士や応急手当て普及員などの有資格者を選抜して構成している

平成19年9月に発足したハイパー消防団員制度は、建設機械、アマチュア無線など専門技術や資格技能を有する団員を対象に事前に募集し登録制としている。市内を3分割して各ブロックごとに隊を編成していた。発足する直接のきっかけになったのは平成16年10月の台風23号の水害で、当初は「機能別消防団を編成してはどうか」との団長の意見から団員を対象にしたアンケートを実施し、有資格者の調査を行い、消防団幹部と消防職員を中心としたハイパー消防団検討委員会を設置し4回の検討会議を経て運用規定を作成し、改めてハイパー消防団員を募集した結果、平成19年9月の発足当時の登録者数延べ167名、うち実数は63名で発足した。(資格が重複するため実数が少なくなっている)
ハイパー消防団員の特徴は、土砂災害や河川の増水、鉄道事故など災害に応じた召集ができることで、団員にはワッペンとヘルメットのシールが貸与される。ハイパー消防団の一番の課題は団員手持ちの重機の減少ということ、人材育成と災害時に迅速に対応出来る体制作りだとのお話だった。建設機械の問題は、建設会社が以前のように自社で重機を所有せずに工事契約が取れた時のみ重機をリースする最近の傾向がこうした部分にも影響を及ぼしていることがわかる。こうした課題については民間協力者による重機の提供を仰いでいた。



ハイパー消防団員のワッペンでこれは団長のもの。ということは団長自身がハイパー消防団員なのですねー。カッコいい。団長は森林組合の組合長がお仕事でした。


機能別消防団は団員 OBが基本

機能別消防団自体は全国各地で採用され珍しいものではなくなってきているが、設置に至る背景は各地で異なっている。視察した綾部市では団員の減少が設置した主な動機で、機能別消防団員は団員のOBが中心である。綾部市でも消防団員のサラリーマン化が進んだ結果昼間は市内にいないケースが増えたため、昼間の災害に対応する団員数が不足してきたため、主に団員経験者を対象にして構成している。
機能別消防団員の身分は、基本団員と同じ非常勤の特別職地方公務員で階級は団員に固定されている。気になる指揮命令系統は所属する分団の分団長の指揮下で活動し、ポンプ車で活動の場合は基本分団員が同乗することが決められている。

女性消防団員「シルキーファイヤー」15名募集に23名が応募

平成22年4月に発足した女性消防団員は、本団に所属して救急救命講習や予防啓発活動を中心で幼稚園や保育園に出向いての人形劇なども行うそうである。視察の対応にあたってくださった綾部市議会事務局職員も女性消防団員として活動していた。本団の副団長1名が担当し、団員の」年齢は20から50歳代。部長1名班長2名で他は団員。現状では基本分団への編入の考えはないということだった。

台風による由良川の水害の対応により、繰り返し総務省表彰を受賞するなど、活動は活発で士気旺盛な消防団だった。

最大の課題は団員確保と高齢化。団員は通年募集

御多分に洩れず、綾部市消防団最大の課題は団員の確保と高齢化だった。改選時には毎回100名近い補充が必要とのことで、これも大変な問題である。注目すべきは団員募集を通年で行っていたことである。各分団長だけでなく自治会長にも募集のお願いをしているとのこと。団員補充の苦労は何処も同じである。また市内事業所に対して消防団協力事業所として消防団員の選出と活動に対する協力を求め、事業所には表示証を交付している。現在交付事業所は10事業所。
また市内の日帰り温泉施設などに消防団員優遇割引などを行い団員と家族の福祉の向上に努めていた。

ハイパー消防団も女性消防団も機能別消防団の1種

小金井市でも平成27年度末で消防団員の改選時期を迎えるが、新年度から災害支援隊創設の予定である。これはこれまでの消防団員の他に、各分団ごとに分団経験者(OB)を募集し構成するもので、団長、分団長の要請により出動し、各分団長の指揮下で活動する予定である。基本的には通常の災害で出動する想定とはしていない。また支援隊の定数も各分団に任せるとしており、分団ごとの事情に配慮した形になっている。視察した綾部市のハイパー、機能別、女性消防団を設置した背景でもわかるように不足しがちな団員の確保と女性の参画、活動の質の維持などの取り組みは小金井市で新年度から始まる予定の災害支援隊の運用や新年度に向け本格化する団員補充活動についても大変参考になる視察だった。

大阪府箕面市

箕面営業室は地域創造部の所管

大阪府北部に位置し、中心部の阪急梅田駅からは約40分の距離にある。人口135,500人、面積47.84㎢、市街地北部は山地で明治の森国定公園に指定され、日本の滝百選である箕面大滝があり年間170万人が訪れる関西有数の景勝地となっている。
行政機構で見ると総務部、市民部などと同等に地域創造部があり、箕面営業室の他に地域活性化室、鉄道延伸室、広域商工室など6室が設置されている。


大阪梅田と宝塚を結ぶ阪急宝塚本線から石橋駅で箕面線に乗り換え、市役所の最寄駅牧落駅へ。箕面線は箕面駅までの3駅間を往復する支線だが阪急電鉄開業時からの路線で、大阪の中心部と観光地を結ぶために敷設された路線である。
市役所の外観。敷地周りに余裕があり車寄せも広くとられている。

市役所内に入ってまず目につくのが床の案内表示とバスの時刻を示すデジタルサイネージの表示板。エントランスの正面には庁舎の総合案内があり、ここで行き先を問い合わせることもできる。


営業室のミッションは移住定住促進

平成21年に設立された営業室は観光地、住宅地として発展してきたが、箕面を「みのお」とはなかなか読んではもらえず、箕面市を知ってもらう、来てもらう、好きになってもらうことで「住んでみたい」人を増やすことをミッションとしている。そのため市外に向けた発信力を高めた活動の展開が必要との考えに立っている。地域創造部は魅力のPRしブランド力を高める役割を担っている。平成27年4月から地域創造部のソフトウェア部門である箕面営業課と商工観光課を統合し、現在の「箕面営業室」となった。

箕面営業室は回廊式庁舎の2階にある。市長室と同じフォロアにあり市長がすぐに顔を出せる配置となっている。中庭に面した窓から差し込む光で廊下も明るい。

箕面営業室の活動資金(予算)はゼロ。セールスプロモーション事業で自ら確保する

営業室長は市内民間企業経験者でダイキン工業からの出向。箕面市ではこうして民間企業のノウハウを活用している。営業室の予算は消耗品など必要最低限とし、活動資金は自ら行うセールスプロモーションで確保している。これまでは各課に分散していた箕面市の情報を集約しターゲット層の子育て世代向け情報を充実させた移住・移住促進パンレット「箕面に住む?」を作成、不動産業者、住宅メーカー、金融機関窓口に設置したり大阪に支社を持つ企業に不動産情報と合わせて送付し、また大阪府下の大手企業や住宅展示場での配布を行っている。

民間に出向する職員は若手、企業からの出向は管理職を

箕面市ではダイキン工業だけでなく、阪急電鉄や関西電力とも人事交流が盛んなのだという。そして市とまちづくり会社でセールスプロモーション実行委員会を設立してグッズ販売などの営利活動を可能にしていた。そしてこの売上を新規事業開発日に活用している。こうした工夫により「お役所仕事」ではなく、突発的なイベント等にも柔軟な対応ができ民間企業との連携が拡大できる体制にしていた。


セールスプロモーション(SP)を実行委員会形式にして営利活動を可能にしている

      

箕面営業室で手がけた商品は営業室入口カンターでも販売している。写真左の「プレミアムゆずママレード」は箕面市北部の止々呂美地区特産の「実生ゆず」を使用したもので、苦味が少なく香りが高い特徴がある。

SP実行委員会では、箕面の滝を描いた手ぬぐいやリール付きパスケース(伸縮できるヒモがついた定期入れ)、ママレードや箕面市のゆるキャラが印刷された特製年賀はがき(!)などを開発し販売している。ママレードは箕面に住んでもらいたい人が集まる少し高級感のあるデパートで販売している。これはターゲットマーケティングを踏襲し、箕面市に住んでもらいたい人が集まる場所でさらにターゲットを絞り込んで売り込む工夫を考えた結果こうした手法になったということなのだ。予算ゼロで活動するためにはそこで仕事する職員が問題に深く突っ込んで考えなければならないし、職員一人一人が結果を出すために何をすれば良いのか考えていかなければ結果が出てこないということなのだろう。こうした商品には必ず「箕面に住む?」リーフレットをつけて販売していた。

 

箕面市のゆるキャラ「滝の道ゆずる」のラッピングが施されたコミュニティーバス。こうしたブランドを戦略的に活用して全体の統一感を出していることもブランド力を高める工夫の一つなのだと感じる。

始まりは若い市長の政治姿勢から

ターゲットマーケッティングで住んでもらいたい層にアプローチして、取り組みの結果を出そうとしている。

地域が持つ魅力をブランド力として高めるための中・長期的なビジョンを持ち、営業室が先頭になり行政の各課の情報を統合して発信していく箕面市の取り組みはセールスプロモーションを実行委員会形式にすることで営利事業を可能にし、行政の壁を越える工夫をしていることが最大の特徴だ。そして民間企業との人事交流についても若い職員を民間で修行させ、行政側では民間の管理職を招くなどの工夫が素晴らしいと感じた。おざなりの交流ではなくしっかりと結果を出して地域の魅力を創出していこうとする姿勢は、首長が地域の良さを自信を持って売り出し地域の活性化につなげていきたいという首長の強い意志が起点となった取り組みだ。全国最年少の34歳で市長に就任した若い情熱を施策として実現しようとしている姿勢の現れであろうと感じた。こうした取り組みを継続して行い、人口増という結果を出していることに強く感銘した視察となった。    


生きづらさを救う居場所とは (発達障がい者当事者青年Rさんのお話を聴いて)

昨日の午前中は、公民館貫井北町分館で「コロナ禍を経験して考える 人と地域がつながる共生社会」講座でした。 7 月 23 日まで 6 回連続で様々な生きづらさを抱える当事者のお話しを聞く男女共同参画講座 の第 1 回目で、講師はこれまで 3 期にわたり小金井市地域自立支援協議会...